第44回オープンカレッジ

2015年04月29日 19:26

日本海側のメタンハイドレート:山崎祐介

 東日本大震災後は原発の停止が相次ぎ、現在の電力はその大半を火力発電所に頼っている日本の厳しいエネルギー事情があり。天然ガスをはじめとする火力発電の拡充がなされてはいるが、もっと、国産海底天然ガスであるメタンハイドレートに日本国民は着目すべきで、掘削技術のみならず、燃焼時の炭酸ガスを減らす技術の開発が急務だと思う。日本政府は2020年代の前半にはメタンハイドレートの商業生産開始を目標としている。

 メタンハイドレートとは、海底に眠っている、メタンと水が低温・高圧で結晶化した氷状の物質(メタン分子またはイオンに水分子が結合したもの)で、燃焼時のCO2排出量は、石炭や石油の約半分、無色無臭のガスで、周りの氷が溶ければ普通の天然ガスとほぼ同じなので今までの火力発電所でほぼそのまま使え、そのまま都市ガスとして使うこともできる海底地下資源である。その起源は、微生物分解起源のもの(太古の動植物の死骸が地中で圧力と熱を受け、長い歳月をかけて変化したもの)と、深部ガスに由来する熱分解起源(地球深部から無尽蔵に湧出するガスによって生成されている)ものの2種類があり、後者が日本海側で発見された。つまり、地球の活動が続く限りメタンハイドレートは生成され続けるので資源が枯渇する心配がない可能性があるという貴重な資源である。        

 1997年独立総合研究所(以下、独立総研)の青山千春博士が、日本海の「ナホトカ号沈没」の調査の際に偶然、海底から立ち上るメタンプルーム(メタンハイドレートの柱)を漁船に装備されている魚群探知機で発見した。メタンハイドレートが泥と混じっている太平洋側(砂層型)とは大きく異なり、純粋な結晶として、海底面に露出(表層型)していた。2012年、独立総研は佐渡ヶ島の南西約30㎞、水深1000mの海域でMHの独自調査を自費で実施しその存在を確認した。同年、独立総研の動きがきっかけとなり、新潟、京都、秋田等日本海沿岸の10府県が合同して海洋エネルギー資源開発促進日本海連合が設立された。経済産業省は2013年の終盤になって、「海底資源のメタンハイドレートが日本海側にも広範囲に存在していることを確認した」と発表し、2013年から政府主導での調査・試掘が開始された。その結果、2014年、政府は日本海側に表層型を数多く見つけた。現在もその探索は続いている。太平洋岸の砂層型では、採取が非常に困難であったため、「コスト的にとても実用化できるとは言えない」とされ、米国産シェールガスの15倍以上、日本のLNG輸入価格の3倍以上と言われた。 しかし、日本海側の表層型では、結晶状で存在しており低コストで採取できるため、実用化すれば「輸入LNG(液化天然ガス)の10分の1程度の価格で販売できるだろう」と期待されている。

 日本海側の表層型メタンハイドレートの長所は、①探索が容易(表層のメタンハイドレートから溶け出したガスが海面に向かって上昇し、平均で東京スカイツリーほどの高さ(634m)の巨大な泡の柱が形成されており、漁船の魚群探知機でも探知可能でこの柱の根元に必ずメタンハイドレートの層がある)②海底土木工事の延長で取り出せる(具体的な採掘方法はまだ確立されていないが日本の海底土木技術は世界トップクラス)③前述のように資源が枯渇する心配がないこと等である。

また、今後の課題として、①地震誘発・地盤沈下の可能性(心配はないという説もあるが、今後とも慎重な研究が必要)②メタンハイドレートの主成分であるメタンはCO2の20倍の温室効果があるとされるので、しっかり凍った状態で取り出す技術(青函トンネルに見るように、日本の海底土木技術は世界トップクラス)が必要不可欠で、下手な採掘に伴って大量のメタンガスが大気中に出れば地球温暖化を招いてしまう。③領土問題(北方領土や竹島、尖閣諸島周辺でもメタンハイドレートが埋蔵されているとみられ、領土問題の根っこにロシアや韓国、中国との利権争いが背景に潜んでいる。私見であるが、成功すれば、日本だけでは到底使い切れないので、エネルギーを近隣諸外国に提供したらどうか。そうすれば資源戦争は起きないだろう。④既得権益との戦い(新たに極端に安いものを開発することは、既得権益者にとって大変な逆風になり、この壁は大変厚い。とくに、石油を巡る既得権益に関わる石油村のグループの動きが懸念される。)、そして、出来ればの話だが、メタンハイドレートの

 昔から海の恩恵を受けてきたにもかかわらず、海に関心を抱く日本人は少ないと言われているが、海は日本人にとって大変重要である。今や、日本の海(経済的排他水域)の大きさは、世界で6位であり、四囲の海は、海底地下資源、海洋からのエネルギー等に多いに利用できる。人類に残された最後のフロンティア海洋時代が到来しつつある。日本は、単なる島国ではなく、海に関心を抱く大海洋国家にならなければならない。

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