第45回オープンカレッジ

2015年06月21日 22:34

家庭の危機と再生への道:渡辺邦彦

ご存知のように日本は人口減少・ 超高齢化社会に向かっている。一人の女性が一生に産む子供の平均数である「合計特殊出生率」は世界最低水準の1.42人である。その上人口高齢化率(65歳以上の人口比)は世界一である。生産年齢人口(16歳~64歳)も8000万人割れになった。日本創成会議「人口減少問題検討分科会」の指摘によれば、2040年 自治体の約半数(896市町村)が消滅の危機に瀕するそうだ。若年女性(20~39歳)が半分以下になるからである。急激な少子高齢化が孤独死の増加、地域防災機能の低下、地域防犯機能の低下など地域社会に様々な弊害及ぼす。そんな中、経済財政諮問会議・有識者会議「未来の選択」委員会は50年後 1億人保持 を提言した。

 「日本人の国民性調査」では国民の半数が「一番大切だと思うもの」は「家族」と答えた。欧米では、子供の2人ないし3人に一人が婚外子で、既に「結婚・家族制度」が崩壊しているが、日本は先進国の中では、奇跡的に結婚・家族制度が守られている国である。夫婦が生涯にもうける子供の平均数(完結出生児数)は40年間大きく変化していない。(2010年1.96人)日本における急激な少子化は、既婚夫婦における子供数の減少が主因ではない。「女性の就労」と「出産・子育て」のトレードオフ問題ではない。日本における少子化最大の原因は若者の「晩婚化」「非婚化」である。30~34歳の未婚率は男性47.3%、女性34.5%にもなっている。「平均初婚年齢」(2012年) は男性30.8歳、女性29.2歳だ。「生涯未婚率」(2010年)は 男性20.1%、女性10.6%だ。一つの原因は未婚女性が結婚相手に求める「最低年収」は400万円以上なのだ。現実は20~34歳独身男性の3割弱が年収200万円以下(2010年)にもかかわらず、20代未婚女性の61.7%、30代未婚女性の65.8%が400万円以上を求めている。2013年の内閣府意識調査によれば、若い世代に「未婚」「晩婚」が増えている理由は、「独身の自由さや気楽さを失いたくないから」が51.9%、「経済的に余裕がないから」が47.4%、「結婚の必要性を感じていないから」が41.9%だった。若い世代で未婚・晩婚が増えている理由として、個人主義、自由恋愛至上主義の蔓延で、結婚できない男女が増加したといえる。30代未婚男女の7割が異性の友人すらいない状態だ。結婚の価値が相対化してしまったのだ。故に少子化対策の最重要課題は、若者の結婚・家庭に関する意識改革(価値観教育)と若者が結婚・出産・子育てし易い環境整備である。即ち、学校・社会・家庭での徹底した結婚観・家庭観教育・啓蒙と雇用対策、出会いの場提供、出産・子育て支援の充実である。「価値観教育・意識改革」が最も重要で、その上で「環境整備」を行ってこそ、効果的な少子化対策となる。

 「理想の子供数」を実現しやすいのは「三世代家族」である。円満な三世代家族では、児童数2人および3人の世帯数が8割近くを占めている。近隣在住を含む3世代同居支援が重要な政策といえる。子育て家庭を支援する充実した「家族政策」を推進すべきである。既婚夫婦の出産意図を高めるには、夫婦が尊敬し、感謝する円満な家庭づくりと、出産・子育てし易い環境整備(家族政策)であるのである。即ち、人口減少社会日本の再生には① 結婚・子育て・家庭価値に関する若者の意識改革・教育の推進 ② 家族が和合する円満な「家庭づくり」のための国民的運動の推進 ③ 結婚・出産・子育て支援のための「家族政策」の充実 ④ 結婚・家庭の価値を守る法律の制定等が必要である。そして「結婚・家庭の価値」を守る立法・政策を推進すべきである。憲法に「家庭尊重条項」を入れたり、「家庭強化都市宣言」「家庭強化条例」の制定をしたり、結婚と家庭の価値を重視し保護している現行民法の条項を堅持して、育児の「外部化」を改め、「子供は家庭で育てる」基本政策(年金や税制を含めて有利な社会政策・制度に)への転換をしたり、三世代の絆強化と同居を促す税制や経済支援の政策を進めるべきである。

 近年の婚外子差別が違憲判決は、不倫を助長し、結婚制度の危機を招来させた。次は女性六か月再婚禁止民法規定の見直しや夫婦別姓と続いていく。渋谷区での同性カップル条例は個人の権利を楯に家父長制度、家族制度を崩壊させようとする第2次フェミニズム運動の流れの延長線上にある。家庭の危機と再生のために国民的啓蒙運動を推進しなければならない。